人間の性質

人間の性質について「エントロピー」をキーワードに考えてみたことを書いてみようと思います。

人間とはどういう存在なのか

人間の存在とは?

 「人間を含め生物は、エントロピーの増大が加速する過程で変化分化した物質である」という一つの仮説を考えた。

 エントロピーとは空間の乱雑さを表す量で、自然に増大するという法則がある。それに則り煙は自然に拡がりエントロピーは増大する。そもそも宇宙のエントロピーは増大している。その中で人間は、放っておいても拡散しにくい地中の鉄を輸出するなど、様々な物質を拡散し、エントロピーの増大を加速している。

 この人間の行動の原動力は幸福感の充足時と不足時の脳状態の差、つまり欲求である。因みに植物の蒸散の原動力は土と大気の水分濃度の差である。脳は生理的欲求や、知覚から作った価値への欲求の充足に向けて行動を指令し、その行動過程で物質は拡散し、エントロピーの増大は加速する。そして人間は変化しつつ更にそれを加速している。人間とはそういう存在かもしれない。

エントロピーとは何か?

要するに複雑さの度合い。
部屋が散らかってればエントロピーは高い。
それだけのこと。

日本の伝統的なゲームに囲碁というものがある。
白と黒の碁石というものを使ったゲームである。
それを碁盤という木でできて表面にマス目が書いた板の上に並べて遊ぶゲームである。
白い碁石を左半分に敷き詰め、黒い碁石を右半分に敷き詰めたとする。
すごく整然としている。
だからこのときエントロピーは小さい。
次に白い碁石と黒い碁石をめちゃくちゃにまぜて置いたとする。
すごく乱雑で複雑である。
だからこのときのエントロピーは大きい。

こんな感じである。

人間も天然のマシン?

 要するに、脳という物質にはハッピーという状態とアンハッピーという状態があって、その差を埋めて脳をハッピーな状態にするために人間は行動する。人間はそういうメカニズムを持つ物質ということ。

 自然界では、何か差があると動きが生じる。そしてこれはその差がなくなるまで続く。

 例えば風がそう。風は空気の圧力の差で生じる。圧力が高いところから低いところに空気は移動する。現実には殆ど起こり得ないが、空気の圧力差がなくなると風は止む。

 熱もそう。熱の移動は温度の差で生じる。温度が高いところから低いところに熱は移動する。そしてこれは温度差がなくなるまで続く。

 電流もそう。電荷の移動は電圧差で生じる。電圧が高いところから低いところへプラスの電荷は移動する。電圧差がなくなれば電荷の流れは止まる。

 化合物もそう。化合物の移動は濃度の差で生じる。インクをコップの水に落とすと、じわーっと濃度の高いところから低いところにインクは移動する。これはコップの水の中でインクの濃度の差がなくなる、つまり均一に色むらがなくなるまで続く。

 何か差があるとそれを埋めるよう何かが動く。これが自然の法則。

 そして大切なのは何かが動くとエントロピーが増大するということ。

 というより逆に、エントロピーが増大するように何かが動くということ。

 人間の場合はちょっとハイレベルで、脳にハッピーな状態とアンハッピーな状態という差があると、脳は何らかの行動を体に命令して体が動く。そしてその行動は脳がハッピーな状態になるまで続く。

 例えば、血中の栄養濃度が低いと、脳は「お腹が空いている」というアンハッピー状態になって、満腹しているというハッピー状態と差が生じる。なので、食べ物を口に入れるように体に命令し、食べ物を食べると血中の栄養濃度が上がって脳がハッピー状態になり、食べるのを止める。

 そしてその過程でさまざまな物質のエントロピーが増大する。

 一番直接的なのは、排せつ物に含まれる物質の拡散でエントロピーは増大する。トイレで用を足すと、排せつ物は下水道を通じ浄化されて別の物質となり海へ放出され、その浄化後の物質のエントロピーは増大する。

 他の生物も同様だが、人間も自然に発生したマシンのようなもの。

 人間も含め生物はエントロピー増大マシンである。